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 それから、その人や物事に対してあまり真剣に考えていない、言葉をきちんと選ぶだけの心遣いがない時。そういう時も「がんばれ」と言う。その「がんばれ」には失礼ながら気持ちがほとんど入っていないけれど。
 一番口にする頻度が高いのは、人に「がんばれ」と言われた時に答える「がんばる」。ここでいやだと言う程私はひねていないつもりなのだが、心の中でいつも、そうたいして「がんばる」訳じゃないんだけど、と引っ掛かりを感じている。
 私が唯一わだかまりなく「がんばる」という言葉を使えるのは、人に対してではなく、人に対する返答でもなく、自分から「がんばる」という時だけである。そう言うこと自体もまためったにないことなのだが、自分で「がんばる」と宣言する時は、ほぼ辞書通りの意味に近い感覚で「気張るで!」「負けへんで!」「やったるで!」と勢いづいた気持ちでいる。そういう時だけはストレートに「がんばる」と言える。
 私にとって「がんばる」の言葉はこのように割とハードルが高く、自分で口にするのもやっとなのだから、とても人に押し付けたりするものではなく、言ってしまえば簡単に押し付けられたりするものでもないのである。

 それにしても、「がんばる」という言葉を辞書通りの意味に使っている人が一体どれだけいるのだろうか。もっとみんな、軽い意味で使っているように思えてならない。例えば「おつかれさま」のように。英語で言う ' take it easy ! ' のように。
 ともあれ、私にとっても、ただいま現在の国語辞典にとっても、「がんばる」はたいそう踏ん張りの効いた強い言葉であることに間違いない。

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 もっと軽い、それこそ ' take it easy ! ' のような挨拶代わりの言葉が日本語にもあると良いと思う。あるいは、「がんばる」の意味がそういう方向に変わっていくのか。
 無邪気に「今日も仕事頑張って」と送られてきたメールを見ながら、私は不承不承「がんばる」と返事を打つ。もしかすると言葉の意味はもう変わっているのかもしれない、そう思いながら。


2004.5.5
でもやっぱり仲の良い友達は私の苦境に
軽々しく「がんばれ」とは言わなかったな

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