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『 決断1(09冬〜春)』
「なんで会社を辞めようと思ったの?」
いろんな人に何度も聞かれた。
「会社が危ないと思った時から、次の手を考え出していた」「会社がこんなに危ないのに中の人たちは未だ危機感もなくぼんやりしているのが嫌になった」「不動産という仕事のリスクを考えるに付け、違う仕事をしたいと思った」・・・などなど、こんな感じで答えたことに、みんな納得するともなく質問を終えたものだった。ところが、とある企業の社長(それなりに著名な人だ)だけが「そう言う理由だとちょっと納得いかないんだけど。だって会社を建て直す方面での生かし方もあるでしょう?」と私に更に突っ込んで聞いてきた。納得いかないと言われてもなぁ・・と思って更に深く自分を分析しようとして私はやっと気付いた。
「数年前から会社が危ないと感じていて、早晩必ず希望退職は募られるだろうと思っていたので、それなら応募して外に出てみようと考えるようになっただけです。もしかして、会社がずっと安泰だと思っていたなら辞めようとは考えなかったかもしれません。でも、最早それはわかりません。私は会社が好きでした。会社というよりこの会社の人が大好きだった。逆に仕事は何でも良くて、私は好きな人たちと仕事をしているのが楽しかったのです」
そう。こんな風に、私が会社を去る決断をしたのは、何かが絶対にしたいという強い意志があったわけではなく、もともと機会が目の前にあったからに過ぎなかった。
会社員でいることは、とても楽なことだと思う。なぜなら、自分が直接お金を稼がなくとも必ず給料はもらえるのだから。会社として稼ぐことと仕事をすること、それから自分の収入を得ること。会社員はそれがつながらなくとも生きていける。
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