子供のころには感じなかったかすかなこわさを抱えながらも、私は泳ぎ続ける。水だけが私を支配するこのときができるだけ長く続いてほしかった。
ここは電波の届かない場所。
誰も私に届かない場所。
ふいに思い立って私は泳ぎをとめた。
子供のころのように裸眼ではない。今でも同じものがみられる自信はなかった。
それでも私は身体を水に鎮め、膝をかかえて空をみた。
うすい色のついた水のゼリーがゆっくりふるえて太陽のひかりをゆらしていた。
私は水の中にいた。そこは誰にも届かない自由な場所だった。
2001.5
初出「Quarterl Magazine Connect 004」
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