なんとなく。
けれど、光を遮られた生活は、確実に私たちを蝕んでいった。侵食する影のように。気付かないうちに。
私たちはいつしか、カーテンを開けなくなっていた。薄暗い部屋の中、家は荒れていき、そして終わりが来た。
この家は、南向きに二面の窓がある。頼りない生地のカーテンは、ほとんど陽射しを遮らない。まぶたを閉じていても感じるひかりが、私を眠りの世界から起こしてくれる。ゆっくりと、穏やかに。
目を開ける。
カーテン越しに窓を開けると、薄い雲を透かして太陽が顔を出そうとしていた。
ベンジャミンの葉が揺れる。
洗濯をしないとな。ごはんを食べたらシャワーを浴びて、買い物に出かけよう。
私は、自分にこうした生活力があることを、長い間忘れていた。私を生き返らせてくれたのは、陽射しを透かす生成りのカーテンだったのかもしれない。
レースのカーテンはもう、必要ない。私は心からそう思った。
2004.4
やっとこういう文がかけるようになりました。 |
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