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『夕暮れのブランコ』
仕事で訪れたその街には、古びた公園があった。砂場にすべり台、鉄棒、動物をかたどった乗り物、そしてブランコ。
夕方五時を回った頃だったが、こどもの姿は見当たらなかった。
ひっそりとたたずむ公園。原色の遊具たちが夕陽を反射している。
私は最後の仕事を終えて帰るばかりとなっていた。早く職場に帰らないとと思う一方で、しかし何かに絡めとられるようについその公園に足を踏み入れてしまったのだ。
どこにでもあるような、こどものための公園。
ブランコの鎖はとうに錆びていて、赤茶けて、血のにおいがする。
黄色いキリンのかたちの乗り物に消えかかった落書きが見える。つたないひらがなの相合い傘。
空は暮れ始めの明るいオレンジで、私は自分がこどもの頃にもこんな空を見ていたことを思い出した・・・。−−−
−−−小学四年生の帰り道。わたしは寄り道して近くの公園のブランコに乗っていた。一緒にいたのはみなちゃんと、ともみちゃん。
みなちゃんは明るくて機転の効くタイプ。成績が飛び抜けて良いわけではないけれど、気が回るので先生にもちゃんと可愛がられるような子だった。
ともみちゃんは、おっとりしていてあまり自分から口を開かない。クラスでは目立たないタイプだったけれど、家が近かったこともあって、わたしたちとは仲が良かった。
同じマンションに住んでいたので、わたしたちは他愛もない話をしながらよく一緒に帰っていた。ちょうどその日の話題はみなちゃんの恋の相談だった。
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